NVIDIAもアップルもチップは「TSMC製」。半導体・新時代のチャンピオンの強さとは

MSN - 03:31
Photo:TaiwanSemiconductorManufacturingCo.,Ltd.かつてNVIDIAが「謎の半導体メーカー」と言われたことがありますが、TSMCもそろそろ「謎の工場」と言われるようになるかも。注目度が激上がりしているって意味で。工場を持たないメーカーのことをファブレス・メーカーと呼びますが、そういった組織からのオーダーに対して生産を受け持つのがファウンドリー企業です。半導

かつてNVIDIAが「謎の半導体メーカー」と言われたことがありますが、TSMCもそろそろ「謎の工場」と言われるようになるかも。注目度が激上がりしているって意味で。

工場を持たないメーカーのことをファブレス・メーカーと呼びますが、そういった組織からのオーダーに対して生産を受け持つのがファウンドリー企業です。半導体の分野では、台湾のTSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー)が一強という時代が続いています。

なにせ、NVIDIAもアップルもAMDもMediaTek(メディアテック)もQualcomm(クアルコム)も皆ファブレス・メーカーで、TSMCに半導体を量産してもらっていますし、自分の工場を持っているインテルまでも一部製品を製造委託していますからね。CPUやGPUといったロジック半導体の製造において、TSMCは60%を超える圧倒的シェアを誇る、ファウンドリー企業のチャンピオンです。日本では、熊本に巨大な半導体工場を作って注目を集めました。

世界の電子の頭脳の半数以上を手がける彼らのこと、もっと知りたくないですか? 僕は知りたい!だから半導体の専門家、安生健一朗(あんじょう けんいちろう) さんに聞いてみましたよ。

生産専業会社として立ち上がったTSMC

──NVIDIAの話題とともに、TSMCについての話を聞くことが増えてきましたが、一般には広く知られていない立場だと思います。TSMCとはどのような会社なのでしょうか。

安生: 端的に言ってしまうと、半導体の専業ファウンドリービジネスを確立した企業です。要するに半導体の製造とパッケージングを一手に担う会社です。

TSMCが力をつけるまでは、インテルやサムスンのように、設計から製造、そして販売までを一気通貫で行うIDM(垂直統合型デバイスメーカー)が主流でした。ですが、TSMCは水平分業ビジネスを半導体の分野に持ってきたんですね。これを成功させたことが、とにかく凄いことだと思います。

──TSMC以外に、ファウンドリー企業にはどのようなプレイヤーがいますか。

安生: 例えば台湾だとUMC(ユナイテッド マイクロエレクトロニクス コーポレーション)がありますね。あとはAMDから独立したGlobal Foundries(グローバルファウンドリーズ)があります。小規模なところだとイスラエル系のTower Semiconductor(タワーセミコンダクター)など、いろいろありますが、ビジネスモデルとしてはTSMCが突出しています。

──シェア60%オーバーは圧倒的ですよね。TSMCはなぜそこまで強いのでしょうか?

彼らの強みは、とにかく受注が途切れず高い稼働率を維持していることと、半導体の製造設備の投資を年々増やし続けて、ライバルが追いつけないほど投資を行なっていることです。

これが意味するのは、いち早く最先端のプロセスルール*のデバイスが作れるようになるということ。まもなく2nmのプロセッサが世の中に出てきますが、この設備が整った工場を作るのには巨額の資金が必要なんですよね。

プロセスルール:半導体を製造するときの、回路(トランジスター)の最小構造サイズを示す技術基準。小さいほど高性能・省電力なチップが作りやすくなり、また同じ面積のシリコン上にたくさんのトランジスターが搭載できるようになります。

2024年の最新製品は3nm(ナノメートル / 10億分の1メートル )プロセスで製造されたもので、2025年後半には2nm級のプロセスによる製品が登場すると見込まれている。

歴史的に見れば、1980年代は日本の企業も半導体チップ生産において最前線を争っていましたが、熾烈な競争で次々と脱落しました。現在、最先端の半導体チップを量産できるのはTSMCやインテル、サムスンくらいでしょうか。世界を見渡しても数社だけです。

ライバルより秀でるために資金のパワーゲームが繰り広げられるのは、以前お話したAIビジネスに似ていますね。あちらも超巨額な投資によって、最先端のAIモデルや、AI向けプロセッサの開発を行っています。

少し違うのは、ファウンドリー事業は投資から回収までのタイムスパンが長いんです。半導体プロセスはハイリス...
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